BLOG「内藤のこうかい診療室」
2026.8.31
歯科医師はスキルかコミュニケーションか

歯科医師に求められるのは、「スキル」でしょうか。
それとも「コミュニケーション」でしょうか。
もちろん、どちらも必要です。
ただ、少し極端なことを言えば、もし歯科医療に完璧な治療があるのなら、コミュニケーションはそれほど必要ないのかもしれません。
必ず治る。二度と悪くならない。痛くない。時間もかからない。費用もかからない。副作用やリスクもない。
そんな夢のような治療があって、それが誰にとっても一番良いのであれば、答えは一つです。
迷う必要も、選ぶ必要もありません。
でも、残念ながら実際の医療はそうではありません。
どんな治療にも、ある程度の不確実性があります。メリットがあればデメリットもあります。
治療期間、費用、身体的な負担、将来のリスク。何かを得るために、何かを引き受けてもらわなければならないこともあります。
そして、何を大切にするのか、どこまでなら負担を引き受けられるのかは、人によって違います。
できるだけ歯を残したい人もいれば、治療期間を短くしたい人もいる。見た目を大切にしたい人もいれば、費用とのバランスを優先したい人もいる。多少大変でも、できるだけ将来の安心につながる治療を選びたい人もいます。
だから、同じような状態の歯を前にしても、その人にとって一番良い答えが同じとは限りません。
僕は、ここにコミュニケーションが必要になる理由があると思っています。
僕にとって診療で必要なコミュニケーションは、単に優しく話すことでも、患者さんの希望を何でも受け入れることでもありません。
実際の診療では、いろいろ説明したあとに、
「先生だったらどうしますか?」
「先生にお任せします」
と言われることもよくあります。
もちろん、それでもいいと思っています。
ただ、「お任せします」と言われても、その人のことを何も知らなければ、僕も何を一番におすすめすればいいのか判断できません。
何を大切にしているのか。
何が不安なのか。
どれくらいの期間なら頑張れそうなのか。
費用についてはどう考えているのか。
そういうことを少しずつ教えてもらえるからこそ、歯科医師として持っている知識や技術を、その人に合った形で使うことができます。
そして、こちらからも治療の選択肢や、それぞれのメリット・デメリット、不確実な部分をできるだけきちんとお伝えする。
そのやり取りを重ねながら、一緒に納得できる道を探していく。
僕は、それが歯科医療に必要なコミュニケーションだと思っています。
だからといって、コミュニケーションを大切にすることが、スキルを磨かなくてもいい理由にはなりません。
技術がなければ、そもそも提案できる選択肢を増やせませんし、選んだ治療を良い結果につなげることもできません。
本筋であるスキルから逃げてしまえば、どれだけ丁寧に話していても、結局は「何も言っていないコミュニケーション」になってしまいます。
一方で、どれだけ技術を磨いても、医療から不確実性や負担を完全になくすことはできません。
だから、対話からも逃げない。
技術を磨いて、できることを増やす。
そのうえで、目の前の人のことを知る。
絶対に正しい一つの答えがないからこそ、「正解」だけではなく、その人が「これでいいんだ」と思える納得も大切にしたい。
それが、キューアンドエー歯科医院が大切にしている歯科医療です。