キューアンドエー歯科医院

新潟県長岡市旭岡2-2

BLOG「内藤のこうかい診療室」

2026.9.14

もしかすると僕は、ずっと「可能性を削らない歯科医療」をつくりたかったのかもしれない。  

最近、自分がこれからやっていきたい歯科医療に、ひとつの名前をつけました。

「可能性を削らない歯科医療」

歯科医なのだから、「削らない」という言葉だけを聞けば、できるだけ歯を削らない治療を想像するかもしれません。

もちろん、それも含まれています。

できるだけ歯を残す。

神経を残す。

すぐに治療せず、経過を見る。

簡単に諦めず、その歯に残された可能性を探す。

そのためには、歯科医師として専門的な知識と技術を磨き続けることが欠かせません。

それも広く深く。

でも、僕が削りたくないのは、歯だけではありません。

その人自身の可能性も、削りたくない。

「歯も、自分も、削らない。」

最近になって、この言葉にたどり着きました。

でも振り返ってみると、この考えは突然生まれたものではありませんでした。

ずっと昔から、自分の中にあった問いだったように思います。

「全身歯科」と「話せる歯科医」

大阪で勤務医をしていた頃のことです。

当時、その歯科医院には「全身歯科」というコンセプトがありました。

歯だけを見るのではなく、全身とのつながりから歯科医療を考える。

僕はその考え方が好きでした。

そもそも僕が歯科医になるきっかけにもなった考え方であり、こうした歯科医療をもっと深く追求したいという思いがありました。

一方で、当時、副院長だった僕自身が大切にしていたものがありました。

それが「話せる歯科医」というコンセプトです。

患者さんが歯のことだけではなく、いろいろなことを話せる。

歯科医師が一方的に説明するのではなく、患者さんと話しながら、一緒に考えていく。

そんな歯科医でありたいと思っていました。

その人にとっての最適な歯科治療方針の選択は、その人がどう生きるかという選択だと感じていたからです。

当時の僕は、「全身歯科」と「話せる歯科医」を掛け合わせたら、特別な歯科医療が生まれるのではないか。

そう考えて、院長にプレゼンをしました。

でも、受け入れてはもらえませんでした。

「違うコンセプトを入れるな」

というのが院長の考えでした。

当時の僕は、それに対してうまく説明することができませんでした。

ただ今考えると、院長がそう考えた理由もわかります。

医院にはすでに「全身歯科」という旗がある。

そこへ副院長が別の「話せる歯科医」という旗を持ってくれば、医院がどこへ向かっているのかわからなくなる。

そう見えても不思議ではありません。

そして何より、当時の僕自身が、

「この二つを掛け合わせた先に何があるのか」

を、まだ言葉にできていませんでした。

あの頃、答えはなかった。

でも、問いはあった。

それから自分で歯科医院を開業しました。

話せる歯科医からキューアンドエー歯科医院へ

医院の名前を「キューアンドエー歯科医院」としました。

コンセプトは、

「なんでもきける、ちゃんとこたえる。」

患者さんの話を歯のことに限らず聞き、その人が何に困っているのかを知る。

こちらから一方的に正解を伝えるのではなく、選択肢を提示し、それぞれのメリットやリスクを共有する。その人の事情や価値観も考えながら、納得できる答えを一緒に探す。

話せる歯科医のコンセプトの核となる部分を抽出し、それを自分たちが大事にする姿勢として磨いていきました。

ときには、

「今は治療しない」

「半年後にもう一度考える」

という答えになることもあります。

一方で、医院で扱いたいものも少しずつ広がっていきました。

歯を治す。

歯を守る。

それはもちろん大切です。

そこから、子どもたちの口腔機能や成長、食べること、健口食育へ。

さらに、子どもたちのCreativityや成長の記録、家族の思い出まで、歯科医院という場所で残せないだろうかと考えるようになりました。

「歯医者が、なぜそこまで?」

そう思われるかもしれません。

僕自身も、一つひとつの取り組みがどこでつながっているのか、完全には説明できていませんでした。

でも最近、ようやく一本の線が見えてきました。

歯科医療のWHATを広げる

歯科医療は、何を扱う仕事なのか。

一般的には、「歯を治し、歯を守る仕事」だと思います。

もちろん、それは大切です。

でも僕は、そこからもう少し広げて考えています。

食べること。

話すこと。

笑うこと。

人と関わること。

自分の身体を大切にすること。

自分で健康を選べること。

これらは、その人が自分らしく生きていくための基盤になります。

だから僕は、歯科医療を、「歯を治す仕事」ではなく、

「人の可能性の基盤を、育て、整え、守る仕事」だと考えるようになりました。

そう考えれば、小児歯科も、健口食育も、Creativityも、成長記録も、僕の中では歯科医療から逸脱した活動ではありません。

すべて、「人の可能性の基盤に関わる」という一本の線でつながります。

僕がやろうとしてきたことの一つは、歯科医療のWHATを、

「歯」から「人の可能性の基盤」へ広げることだったのだと思います。

歯科医療のHOWを変える

もう一つは、歯科医療を「どう届けるか」です。

歯科医師には専門知識があります。

だから専門家として、意見を伝えなければなりません。

でも、医学的な正解と、その人の人生にとって納得できる答えは、必ずしも同じではありません。

仕事がある。

家族がいる。

時間の制約がある。

経済的な事情がある。

怖さもある。

そして、その人自身の価値観があります。

だから、専門家が正解や選択肢を与えて終わるのではなく、事情を聞く。

選択肢のメリットデメリットを伝える。

一緒に考える。

迷う。

ときには待つ。

そして、本人が納得できる答えにたどり着く。

僕が大切にしてきたこの「納得プロセス」の考え方は、15年前にある患者さんに出会ってから、ずっと大切に磨き続けてきました。

(15年前の患者さんとの出会いの物語はこちらをご覧ください。)

歯科医療のHOWを、

「正解を与える」から

「一緒に納得をつくる」へ。

これが、もう一つの軸です。

7年前にこの考え方を整理して打ち出したのが「話せる歯科医」というコンセプト。

あの頃の二つの言葉が、ようやくつながってきました。

「全身歯科」と「話せる歯科医」。

当時は、二つのコンセプトを掛け合わせたいと思っていました。

でも今振り返ると、少し違って見えます。

「全身歯科」は、

歯科医療のWHATを広げたいという問い。

「話せる歯科医」は、

歯科医療のHOWを変えたいという問い。

だったのではないか。

当時の僕は、それを説明する言葉を持っていませんでした。

その先に何をつくりたいのかも、わかっていませんでした。

でも、問いだけはすでに始まっていた。

あれから臨床を続け、自分で医院をつくり、患者さんやスタッフ、家族と向き合う中で、その問いへの自分なりの答えが少しずつ見えてきました。

「可能性を削らない」とは何か

可能性を削らない。

これは、「何がなんでも歯を削らない」という意味ではありません。

必要なら、歯を削ることもあります。

抜歯を選ぶこともあります。

患者さんにとって厳しいことを伝えることもあります。

僕が大切にしたいのは、

まだ残っている可能性を、こちらの都合や思い込みで早々に閉じないこと。

今ある歯の可能性を、できるだけ残すこと。

いくつかの選択肢の中から、その人自身が納得して選べる状態をつくること。

そして子どもたちには、今はまだ見えていない未来の可能性が育つ余白を残すこと。

言葉にするなら、「残す。選ぶ。育つ。」なのかもしれません。

その人の可能性が残る。

その人が自分で選べる。

その人の中にある可能性が育っていく。

そのために、僕たち歯科医院に何ができるのかを考え続けたい。

それが僕の考える、「可能性を削らない歯科医療」です。

大阪でプレゼンをしたあの日。

僕にはまだ、「可能性を削らない歯科医療」という言葉はありませんでした。

WHATもHOWという整理もありませんでした。

ただ、今ある歯科医療を、もう少し広げられるんじゃないか。

そんな感覚だけがありました。

今になって振り返ると、

歯科医療のWHATを広げる。

歯科医療のHOWを変える。

その先に、人の可能性を削らない医療をつくる。

ずっとやろうとしてきたことは、これだったのかもしれません。

昔から答えを知っていたわけではありません。

むしろ、わからなかったから、ずっと考えてきました。

そしてそこからの自分の人生が気づかせてくれました。

でも今、完成したとは思っていません。

「可能性を削らない歯科医療」とは何なのか。

歯科医院には、まだ何ができるのか。

これから実践しながら、もっと考え、もっと言葉にしていきたいと思っています。

ただ一つ、今は以前よりはっきり言えます。

僕は、歯だけを治すために歯科医療をしているのではない。

人が自分らしく人生を咲かせるための基盤を、育て、整え、守りたい。

そしていつか、その人が自分の人生を振り返ったとき、

「この人生でよかった」

と思えることに、歯科医療がほんの少しでも関われたら。

そんな歯科医療を、これからつくっていきたいと思っています。

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